石巻追想(8) 苛立ち
ボランティアというと、地元の人も大感謝してくれて、身体は辛くても精神的には気持ちよくなれるもの…と期待して来る人が、特に学生さんなどには多いようです。
もちろん「ありがとう」「ご苦労様です」と笑顔を向けてくれる人が圧倒的に多いですが、そうではない人たちも大勢います。
自分などは、参加させてもらった団体が地道に信頼関係を築いてくれていたおかげで、そうした苦労をあまり目にしていないと思いますが、彼らも来た当初は「物見遊山の冷やかしじゃないのか」「火事場泥棒でもするつもりだろ」「結局、来ただけの自己満足で何も出来ずに帰るだけ」というような反応を、よく受けたと聞きます。
今回、長い被災生活の不安やストレスから、苛立った住民の方が激怒するシーンを見ることになってしまいました。
ある細い路地でのゴミ出し作業をしていた時。大量の瓦礫とヘドロから少し離れたところに、携帯電話が落ちていたそうです。電源が入っていたので、これは「ゴミではなく落し物じゃないか」と判断して、その作業班のリーダーをしていたYさんは捨てずに保管しておくことにしました。
その日も夕方に作業を追え、Yさんは他の作業場を回ったりしているうちに、うっかりその携帯電話のことを失念してしまい、そのままキャンプ地に戻ってしまいました。
夜のミーティング中、その携帯の持ち主が電波の発生源から場所を特定して、キャンプ地までやって来ました。Yさんは「あっ!」と叫ぶと、「すみません、僕が預かってました。車の中です。」と走っていきます。みんな「良かったね」という空気が流れました。
しかし、なかなか彼らは駐車場から戻ってきません。やがて、険悪な怒鳴り声が響き渡ってきました。
携帯を拾った場所からキャンプ地まで、車で1時間と少し。警察にも届けず、そんな場所に運び去られたことで、落とし主は「盗まれた」と断じていたようです。
『この泥棒野郎!』『何がボランティアだ、テメェらなんかが来たって、何も変わんねぇんだ!』『ガソリン使って、こんなところまで来させやがって!』と、凄い剣幕で怒鳴り散らす声が、胸に刺さりました。
Yさんはひたすら謝っていたのですが、相手が全くおさまらず暴力にもなりそうだったので、結局他のリーダーが彼らの目の前で110番通報。事情を説明して「間に入ってください」とお願いすることに。
警察を呼んだと知ると、落とし主は「めんどくせぇ」と言って引き上げはじめました。同行者が他に2人ほど居たのですが、彼らは最初から興奮する1人をなだめようとしてくれていたようで、去り際にも『すみませんでしたね、あの、今後ともまた、よろしくお願いします。』と声をかけてくれました。
翌朝、少し心配していましたが、Yさんは普段と全く変わらずに作業に出かけて、誰よりも率先して働いていました。そしてこの日は、ちょっと嬉しいことになるのですが、それはまた後日。